胎児性アルコール症候群とは?妊婦さんの飲酒の危険性 | DNA先端医療

2025.08.08

妊娠

胎児性アルコール症候群とは?妊婦さんの飲酒の危険性

妊娠中の飲酒によって引き起こされる胎児性アルコール症候群。妊婦さんのなかには、妊娠中の禁酒について理解していても、胎児性アルコール症候群について知らない人もいるのではないでしょうか。

この記事では、胎児性アルコール症候群の症状やリスクについて詳しく解説します。妊娠中の飲酒について気になる人は参考にしてください。

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胎児性アルコール症候群とは

胎児性アルコール症候群(Fetal Alcohol Syndrome:FAS)とは、妊婦さんが飲酒することで生じる赤ちゃんの先天的な障害のことです。妊娠中に飲酒すると、胎盤を通じておなかの赤ちゃんにまでアルコールが移行します。胎内にいる赤ちゃんは肝臓の機能が十分でないため、アルコールを処理しきれず、胎児の健康に大きな影響を与えます。

とくに妊娠中は妊娠前よりも、アルコールの代謝能力が落ちていることが多くなります。普段よりもアルコールが体内に長時間残りやすくなることで、その分赤ちゃんにもアルコールの影響を受けやすくなります。

胎児性アルコール症候群の症状

胎児性アルコール症候群は、特徴的な顔貌や発達遅延、中枢神経障害の症状がみられます。それぞれの症状について詳しくみていきましょう。

特徴的な顔つき

胎児性アルコール症候群の赤ちゃんは顔つきに特徴があります。具体的には、上唇が薄い、鼻の下から唇にかけて立体感がない、平坦な顔が挙げられます。

成長の遅れ

胎児性アルコール症候群の赤ちゃんは出生時や出生後に成長の遅れがみられやすくなります。生まれた時は体重が少なめで低出生体重児として生まれるケースも多いです。また生まれた後も身長の伸び方や体重の増え方が低めで体重増加が遅れることもあります。

中枢神経障害

胎児性アルコール症候群により、赤ちゃんの中枢神経の発達にも影響を及ぼします。胎児性アルコール症候群の赤ちゃんは、脳の形態異常により小頭症になることがあります。

またその他の中枢神経の障害として、聞こえの低下(感音性難聴)、運動や動作がぎこちない(協調性運動障害)といった症状がみられることがあります。

胎児性アルコール症候群による特徴的な顔つきや低体重は、成長とともに分かりにくくなることもあるでしょう。一方で、妊娠中の飲酒によってADHD(中池血管多動性障害)といった発達障害のリスクを高めることが分かっており、「胎児性アルコール・スペクトラム障害」と注目されています。

妊婦さんの飲酒が赤ちゃんに及ぼす影響

妊娠中の飲酒は、胎児性アルコール症候群だけでなく、流産や早産のリスクを高めます。飲酒によりアルコール摂取すると、子宮を収縮させる作用のある「プロスタグランジン」という物質が増加するためです。

現代は医療技術が発展しているため、早産により赤ちゃんが生存できても、妊娠34週未満で生まれた赤ちゃんは、体内の器官が未発達である状態です。そのため、NICU(新生児集中治療室)にて、呼吸や循環、栄養サポート受けなければなりません。また赤ちゃんによっては退院後も医療的なケアが必要な場合も多くあります。

妊婦さんの飲酒とリスクの関係

胎児性アルコール症候群は、妊婦さんの飲酒量の影響も受けます。ここでは妊娠中の飲酒と胎児性アルコール症候群のリスクについてみていきましょう。

飲酒量

胎児性アルコール症候群は、妊婦さんの飲酒量が増えるほど影響が大きくなります。例えば、1日のアルコール摂取量が15ml未満であれば、おなかの赤ちゃんへの影響は少ないとされます。一方、90ml以上になると、赤ちゃんに奇形が起こるリスクが高くなり、120mlであれば胎児性アルコール症候群の発症率が30~50%になります。

飲酒した時期

妊娠中はどの時期に飲酒しても、胎児性アルコール症候群のリスクとなります。アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドは、赤ちゃんの細胞の増殖や発達に影響を与えるためです。

具体的には赤ちゃんの器官形成時期である妊娠初期では、顔つきなどの形態異常が生じやすく、妊娠後期では赤ちゃんの発育の遅れや中枢神経の障害を引き起こします。

胎児性アルコール症候群に関するQ&A

胎児性アルコール症候群など妊娠中の飲酒の影響についてさらに詳しく知りたい人もいるでしょう。ここでは胎児性アルコール症候群についてよくみられる質問について回答します。

妊娠と気づかずに飲酒したときの影響は?

妊婦さんのなかには、妊娠に気づく前にアルコールを摂取したという人もいるでしょう。飲酒量がそれほど多くなければ、おなかの赤ちゃんの健康に大きな影響はありません。

受精卵の着床は妊娠3週頃に起こるため、妊娠超初期の飲酒であれば問題ないでしょう。ただ多くの女性が妊娠に気づくのは、生理の遅れに気づく妊娠5週目頃です。

胎児性アルコール症候群の予防のために大切なことは、妊娠が発覚した段階ですぐに禁酒を始めることです。1日にビールやワインを5杯以上飲んでいるような人はリスクが高まるため、医師に相談しましょう。

少量ならアルコールを飲んでも大丈夫?

少量のアルコールも赤ちゃんの健康に影響を与える可能性があります。お酒が好きな妊婦さんのなかには、「少しくらいのアルコールなら飲んでも大丈夫」と考えている人もいるものです。

以前は「アルコール15ml未満」であれば、赤ちゃんに影響がないといわれていますが、アルコールの代謝は、妊婦さんの体質やお酒の飲み方によっても左右するものです。

例えば、週平均ではアルコール摂取が1日当たり15ml以下でも、飲酒日に60~90mlのアルコールを摂取しているケースでは、赤ちゃんが胎児性アルコール症候群に罹患する可能性があります。妊娠中の飲酒は少量でも影響があることを覚えておきましょう。

授乳中の飲酒は赤ちゃんに影響がある?

母乳育児をしているママのなかには、授乳中の飲酒について気になっている人もいるでしょう。飲酒によりママの体に吸収されたアルコールは母乳に移行します。そのため、飲酒後に授乳を行うと、赤ちゃんが傾眠傾向を示すことがあります。

授乳期間中に少量のアルコールを飲んでも、赤ちゃんの健康には大きな影響がないとされています。しかし、アルコール代謝や飲み方は個人差が大きいため、リスクを理解したうえでの判断が必要です。

とくに体内のアルコール濃度は、飲酒後1時間半ほどでピークになります。そのため、どうしてもお酒を飲みたい場合は、授乳後に飲酒するようにしたり、次回分を搾乳しておいたりするのもよいでしょう。

まとめ

胎児性アルコール症候群は、妊婦さんの飲酒により、赤ちゃんがアルコールの影響を受けることでみられる先天的な障害のことをいいます。胎児性アルコール症候群の症状には、特徴的な顔貌や発達遅延、中枢神経障害のほかに、流産のリスクを高めます。

妊娠中の赤ちゃんの健康状態は、妊婦さんの生活管理によっても左右されますお酒の種類や量にかかわらず、妊娠がわかった時点で禁酒を行いましょう。

参考:
胎児性アルコール・スペクトラム障害
飲酒・喫煙と先天異常

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ABOUT ME

原明子
国立大学で看護学を学び資格を取得し、卒業後は都内の総合病院に勤務。 海外医療ボランティアの経験もあり。 現在は結婚・子育てのため、医療や健康分野を中心にライター・編集者として活動中。 学歴:2005年 国立大学看護学部卒業。取得資格:看護師、保健師。

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