2024.12.10
妊娠
妊娠を心待ちしている人の中には、妊娠中にみられる症状がみられている人もいるのではないでしょうか。妊娠を強く意識することで、想像妊娠の症状が現れることがあります。
本記事では想像妊娠の定義や症状、妊娠との見分け方について解説します。想像妊娠について詳しく知りたい人は参考にしてみてください。
想像妊娠とは、妊娠をしていないのにもかかわらず、妊娠初期のような心身の症状が現れることです。医学用語では「偽妊娠」といいます。想像妊娠は思い込みによってみられる症状であり、本当に妊娠しているわけではないため、赤ちゃんが生まれることはありません。
想像妊娠になりやすい人は、妊娠に対して強い期待感や恐怖感を持つ人です。例えば、長期間の不妊治療で妊娠を強く待ち望んでいたり、周囲から赤ちゃんの誕生を過度に期待されていたりすると、想像妊娠が起こりやすくなります。
また「前回のセックスで避妊に失敗してしまった」「恋人と別れた後に妊娠しているかも」など、妊娠に対して強い不安を持つ人も、想像妊娠の症状がみられやすくなります。
想像妊娠では実際に妊娠が起きていませんが、妊娠初期のような症状がみられます。具体的な症状は次のとおりです。
上記の症状は、「妊娠をしている」という思い込みによる症状です。想像妊娠により妊娠を彷彿とさせる症状が現れるメカニズムについては明らかになっていません。
しかし現状では、妊娠を強く意識することで、自律神経の働きやホルモンバランスに変化が生じるためと考えられています。自律神経やホルモンバランスは脳で調節されているため、精神状態の影響を受けやすい特徴があります。
また、排卵出血を着床出血、便秘によるお腹のふくらみを胎児の成長と捉えるなど、生理周期にともなう体の変化を妊娠によるものと捉えることも原因となっています。
ごくまれにですが、想像妊娠によりお腹が大きくなることがあります。想像妊娠は、本人が妊娠していない事実を受け入れることで、一連の症状が治まっていきます。
しかし、自分が妊娠しているとずっと思い込むと、妊娠経過が進んでいるようにお腹が大きくなったり、胎動のような動きの知覚や母乳の分泌を起こったりすることもあります。
想像妊娠がみられている女性の中には、妊娠に対して強い願望を持っている人も多くいます。妊娠をしていない事実について、本人がすんなりと受け入れられないときは、医師がしっかり言葉で伝えたり、胎嚢が写っていないエコー写真を見せたりする必要があります。
ただ想像妊娠によりお腹が大きくなっても、子宮内に赤ちゃんがいるわけではありません。大きくなったお腹の中身は脂肪であることが多く、便秘がちの人は腸内にたまった便のこともあります。
想像妊娠と妊娠による症状の見分け方は、基礎体温グラフを確認すること、妊娠検査薬の使用があります。それぞれについてみていきます。
妊活中や生理周期の把握のために基礎体温を測っている人は、グラフの推移を確認しましょう。妊娠が成立すると、排卵後の高温期が2週間以上続きます。一方、妊娠しておらず生理が来るときは「黄体期」から「月経期」にかけて、基礎体温の低下がみられます。
基礎体温を測るには、婦人体温計を使う必要があります。一般の体温計はコンマ下1桁まで計測できますが、婦人体温計はコンマ下2桁まで計測できます。基礎体温の計測により、生理周期にともなう体温の微細な変化をグラフ化するためです。
また基礎体温は、身体活動や時間帯の影響を受けないように、起床直後など決まった日時と条件で計測する必要があります。
自分が妊娠しているかどうかを確認できるのが妊娠検査薬です。妊娠検査薬は尿中に含まれる「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」の量により、妊娠の有無を確認します。hCGは胎盤の元となる絨毛組織から分泌されるホルモンです。
妊娠検査薬は、次回の生理予定日の1週間後から使用できます。妊娠直後はhCGの量が十分でなく、正しい検査結果を得られないことがあるためです。
妊娠検査薬で陽性になったら、必ず医療機関を受診して妊娠の診断を受けましょう。産婦人科では、超音波(エコー)検査により、異所性妊娠などの異常な妊娠ではないかを確認することもできます。
hCGの分泌は胎盤由来の悪性腫瘍でもみられるため、妊娠検査薬が陽性になることがあります。妊娠検査薬の陽性結果が本当に妊娠によるものかどうかを確認するためにも、産婦人科の受診が必要です。
想像妊娠についていくつかの疑問がある人もいるでしょう。ここでは想像妊娠についてよくみられる質問とその回答を紹介します。
想像妊娠は人間だけでなく、犬やウサギ、クマなどの動物でも起こることがあります。人間にみられる想像妊娠は心理的要因が影響していますが、動物の偽妊娠はホルモンバランスの影響で起こります。
とくに発情期の動物では、プロラクチンの分泌の影響で、交尾後に妊娠が成立していなくても、乳腺の腫大や乳汁分泌、巣作り行動がみられます。動物の偽妊娠による症状は、発情期を過ぎれば自然に収まります。
想像妊娠は心身症の一種であるため、女性だけでなく男性にも起こることがあります(医学用語で「クーヴァード症候群」といいます)。
男性は生物学的に妊娠が不可能ですが、パートナーの妊娠をきっかけに、吐き気、体重増加、気分の変化、食欲の変化、陣痛のような痛みなど、妊娠中の女性にみられやすい症状を経験します。
男性の想像妊娠では、男性ホルモンの「テストテロン」やストレスホルモンの「コルチゾール」の分泌レベルに変化がみられます。パートナーとの絆が強い男性、父親として生まれてくる子どもの将来を過度に心配する男性は、想像妊娠がみられやすい傾向があります。
想像妊娠は、実際には妊娠していないのにもかかわらず、妊娠初期の症状がみられることをいいます。妊娠を強く望んだり、心配したりすることで、自律神経の働きやホルモンバランスに変化が起こり、妊娠中にもみられる症状が起こります。
偽妊娠は女性だけでなく、男性や動物にも起こります。とくに人間にみられる想像妊娠は心理的な要因が強く影響しています。妊娠をしたかのような症状をみられたときは、基礎体温グラフを確認したり、市販の妊娠検査薬を使用したりして、必要に応じて産婦人科を受診しましょう。
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参考:
想像妊娠はレアだがリアル、お腹が膨らみ母乳も、なぜ起きる?
男性にも想像妊娠がある?―クヴァード(Couvade)症候群―
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