2023.09.08
妊娠
妊婦さんの中には、周りの人から「あまり魚を食べない方がいい」とアドバイスを受けたことがある方もいるのではないでしょうか?妊娠中はどれくらい魚を食べても大丈夫なのか気になりますよね。
この記事では、妊娠中の魚の摂取や、妊婦さんが1週間に摂取できる魚の目安量について解説しています。妊娠中も魚を食べたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
妊娠中に魚を食べるときに気になるのが水銀です。水銀は有害重金属のひとつで、中枢神経に障害を引き起こします。
自然界では「メチル水銀」という有機水銀の形で存在していますが、人間のメチル水銀の摂取の8割は魚介類やクジラなど水産物を食べることに由来しています。日本の代表的な公害病である水俣病もメチル水銀によるものです。
一般に、海水には無機水銀が含まれていますが、海にいるプランクトンによってメチル水銀に変換されます。メチル水銀が脂に溶けやすく、濃縮しやすい性質を持つため、食物連鎖によって濃度が増します。
そのため、食物連鎖の上位にある水産物を食べると、より多くのメチル水銀を摂取することになるのです。一方で、メチル水銀を摂取しても、時間をかけて体から排出されるので、体内にどんどん蓄積されるというわけではありません。
妊婦さんがメチル水銀を摂取すると、胎盤を通じておなかの赤ちゃんに届きます。赤ちゃんは水銀への感受性が高いことが分かっており、脳や神経の発達に影響がある可能性があります。
妊娠中に多く魚を食べた妊婦さんから産まれた子どもは、発達が遅かったり、学習障害がみられたりしたという報告があります。
メチル水銀は食物連鎖によって濃縮されるので、すべての水産物に同じ量のメチル水銀が含まれているわけではありません。また、同じ魚でも、大きさが異なればメチル水銀の濃度が異なります。
主な魚介類のメチル水銀の含有量の目安は以下になります。
メチル水銀を多く含む魚は、食物連鎖が上位の魚や寿命が長い魚にみられます。
毎日、日本人によく食べられている魚の多くは、メチル水銀の含有量が少ない魚です。以下の魚は妊娠中でも安心して食べられます。
キハダ・ビンナガ・メジマグロ・サケ・アジ・サバ・イワシ・サンマ・タイ・ブリ・カツオ
日本人の平均的なメチル水銀の1日の摂取量は、許容量の半分から3分の1程度といわれています。そのため、一般的な食事を取っているのであれば、健康への悪影響は心配する必要はありません。
とはいえ、日常的にメチル水銀が多く含まれている魚をたくさん食べれば、許容量を超えてしまう可能性があります。妊娠中に魚を食べるときは、魚を食べる量と種類に気を付けましょう。
ある程度メチル水銀の含有量が中等度の魚も、量に気をつければ妊娠中も食べられます。メチル水銀の含有量が中等度の魚は、以下の量と頻度で食べるようにしましょう。
・1食分80gを週2回まで
キダイ・マカジキ・インドマグロ・クロムツ・ユメカサゴ・ヨシキリザメ・イシイルカ
・1食分80gを週1回まで
キンメダイ・メカジキ・本マグロ・メバチマグロ・エッチュウバイガイ・マッコウクジラ・ツチクジラ
多くの方にとっては、あまりなじみがないかもしれませんが、クジラやイルカは妊娠中に食べるのを控えるのがおすすめです。メチル水銀が多い食用のクジラとイルカは以下になります。
コビレゴンドウ・バンドウイルカ
妊娠中の魚の摂取は、水銀のみ注目されがちですが、それ以外も注意点があります。日本人は魚の生食をする人も多いですが、妊娠中は気を付ける必要があります。
生魚には、腸炎ビブリオ・ノロウイルス・リステリア菌、アニキサスなど食中毒の原因菌や寄生虫が潜んでいることがあります。特に、リステリア菌はお腹の赤ちゃんにも感染するリスクがあります。
妊娠で体の免疫力が低下していると、普段よりも食中毒にかかりやすくなります。生で食べる刺身や寿司は大変美味しいですが、妊娠中は加熱した魚を食べるようにしましょう。
妊娠中も適度な量であれば、魚料理を食べることができます。水銀やそのほかの健康リスクを心配して、水産物を控える必要はありません。妊娠中に魚を食べるメリットは以下のものがあります。
魚は低カロリーで良質なたんぱく質源です。赤ちゃんの体作りにはたんぱく質が欠かせません。肉類や卵、大豆製品など他のたんぱく質の食材も組み合わせながら、バランスのよい食事を心がけましょう。
妊娠中に魚に含まれるオメガ3脂肪酸を取ると、妊娠中や産後の抑うつに良いとされています。魚に含まれるDHA・EPAはオメガ3脂肪酸分類されます。
妊娠中や産後はホルモンバランスの変化により、メンタルヘルスが悪化しやすくなります。妊娠中の魚の摂取は、マタニティブルーや産後うつの予防にも役立ちます。
妊娠中に魚を食べると、生まれた子供の認知能力が高いという報告もあります。魚の油には、脳や神経の発達をサポートするDHAが含まれているためです。
報告では、マグロなど大きい魚を食べるほど、子どもの認知能力の発達に効果的とされています。ですが、大きい魚は水銀の含有量も多いので、前述した範囲内で摂取するようにしましょう。
妊婦さんの中には、魚の身以外の部分を食べても良いか気になっているかもしれません。ここでは、妊娠中の魚の目や魚卵の摂取についてみていきます。
メチル水銀は魚の身に多く含まれています。そのため、一般的な範囲内であれば、魚の目を食べても問題ありません。魚の目には妊娠中に積極的に摂取したいDHAやEPAが豊富に含まれています。
DHAにはおなかの赤ちゃんの脳の発達に関わっており、EPAには血液をサラサラにする効果があります。
一般的に食べられているイクラやたらこの親魚は、水銀が少なめの魚なので、一般的な量であれば食べてもかまいません。ただ、魚卵は塩分が多いため、妊娠中にかかわらず食べ過ぎには注意しましょう。
魚は良質なたんぱく質であり、妊娠中もバランスの良い食事を取る上で欠かせない食材です。一方で、大きな魚は有害な水銀が多く含まれています。妊娠中に魚を食べるときは、水銀の少ない魚を選んで食べるようにしましょう。
参考:
これからママになるあなたへ お魚について知ってほしいこと
食品の安全に関するQ&A
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