2023.02.09
その他
「生理前でなんだかイライラしてしまう」「生理前は食欲がとまらない」など、生理前にいつもと違う身体的・精神的な特徴があれば、PMS(月経前症候群)の可能性があります。
今回はPMSの具体的な症状と原因・対処法についてお伝えします。長く付き合っていく月経だからこそ、上手にPMSと付き合ってみませんか?
PMSの正式名称はPremenstrual Syndromeで、日本語では「月経前症候群」と説明されます(今回の記事はPMSと記載しています)。
日本産科婦人科学会によると、PMSは「月経前 3~10 日間の黄体後期に発症する多種多様な精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減弱あるいは消失するもの」と定義されており(※①)、月経が始まる 3~10 日間から、様々な精神的・身体的症状がみられることが特徴です。
女性の約70〜80%が月経前には何らかの症状があると言われていますが、その症状や程度は様々です。また生活に困難を感じるほどのPMSを示すのは女性全体の5.4%程度と言われています(※②)。
PMSの症状は主に身体的な症状と精神的な症状に分けられます。代表的なPMSの症状を紹介します。
症状には個人差があり、また程度も異なります。また毎回症状が同じという訳ではなく、同じ人間であっても月によって症状が異なることもあります。また年齢によっても症状は違うと言われており、年齢を重ねるごとに症状が辛くなっている方もいるようです。
これらの症状が月経前3~10日程みられ、月経が開始すると数日以内に症状がよくなる、消失する場合はPMSの可能性が高いです。
またあまりにも精神症状が強い場合は、PMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder:月経前不快気分障害)と呼ばれる場合もあります(※③)。
なぜ月経前にこのような身体的・精神的症状が出現するのでしょうか?
実はPMSのはっきりとした原因は分かっていません。しかしながら、PMSの出現にはホルモンバランスが関わっていると考えられています。
PMSと関わりのあるホルモンは、主にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンだと考えられています。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は妊娠の継続を助けるホルモンです。
一般的に女性の身体は卵胞期、排卵期、黄体期、月経というリズムを繰り返しています。
エストロゲン(卵胞ホルモン)は排卵期にむけて分泌量が増加し、妊娠しやすいように卵胞を育てたり、子宮内膜をふかふかにして受精卵が着床しやすいよう整える働きがあります。
このエストロゲン(卵胞ホルモン)は血管や骨、関節や脳などを健康に保つ働きがあり、また肌の調子を整える働きもあります。合わせて自律神経の働きを安定させる働きがあるため、卵胞期は穏やかに過ごせるかたも多いのではないでしょうか?
一方、プロゲステロン(黄体ホルモン)は黄体期に分泌量が増加する女性ホルモンです。プロゲステロン(黄体ホルモン)は妊娠が成立したら妊娠の継続を助ける作用もあり、体温を上げたり、身体に水分や栄養を溜め込むといった作用があります。これが食欲の増加や眠気や便秘、イライラなどの症状につながることもあります。
通常、女性の身体はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が減ったり増えたりを繰り返しています。これらのホルモンや神経伝達物質の異常がPMSの原因であると考えられています。
PMSは女性ホルモンの影響だけでなく、ストレスも関係している可能性があります。脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスなどの影響を受けると言われています。
辛いPMSの症状に悩まされている方も多いのではないでしょうか?病院受診から自分でできるセルフケアまで、PMSの症状の対処法をまとめました。
「PMSで病院を受診してもいいのかな」「この程度は我慢できるかな」と病院受診をためらってしまう方も多いですが、PMSの症状や程度は人それぞれです。症状が辛いときは早めの病院受診をしましょう。
病院では薬による治療や、症状に対する治療を行う場合が多い(※②)です。
・排卵抑制療法(排卵を抑える治療法)
低用量ピルや低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)で排卵を止めることで、ホルモンの変動を少なくすることを目的とします。服用している期間だけ排卵を止める作用があり、服用をやめると排卵が復活するため、その後の妊娠などに影響を与えません。
・症状に対する治療法
痛みやむくみ、精神神経症状や自律神経症状に合わせて薬を処方します。また症状や体質に合わせて漢方薬が選択されることもあります。
・カウンセリング・生活指導・運動療法など
PMSに対して正しい理解と認識を促し、規則正しい生活リズムの獲得のためカウンセリング・生活指導・運動療法などを行う場合があります。
・PMSの症状の日記をつける
自分は生理の何日前からどのような症状があるのか、どういったときに症状が良くなるか、悪くなるかなど、生理周期と合わせてPMSの症状の日記をつけることで、自分に向き合うことができます。
こういうときにイライラしてしまうな、急に食欲が増えて食べすぎてしまうにはどうしたらいいのだろう、ストレスが多いななど、自分と向き合うきっかけになり、セルフケアがしやすくなります。
タバコを吸うことは血流を悪化させる働きがあります。合わせて自律神経が乱れたり、冷えの原因にもつながるため、PMS症状改善のためには禁煙することをおすすめします。
また自分が吸わなくても、受動喫煙もPMSには悪影響です。
アルコールはむくみの原因になり、また月経前にアルコールを摂取すると、酔いがまわりやすい方もいるようです。
またカフェインは神経を刺激し、自律神経が乱れることにつながります。アルコールやカフェインが好きな方は、月経前だけでも、摂取を控えたり量を減らしたりすることをおすすめします。
バランスの良い食事は、自律神経を整えることはもちろん、むくみや便秘などの症状改善にも効果があります。また生理前はつい食欲が増えて食べすぎてしまう、という方も、無理のない範囲で、栄養価の高いフルーツやナッツ、低脂肪のヨーグルトなどを適量おやつに食べるなど、摂取する食事内容を工夫しましょう。
またPMS緩和にはカルシウムやマグネシウムが効果的と言われています。カルシウムやマグネシウムを含む食品を中心に、バランスの良い食事を摂取することをおすすめします。
仕事を頑張りすぎている場合、過度なストレスでPMSの精神症状が強く出る場合もあるようです。あまりにも精神的・身体的な症状が強い場合、仕事の負担を減らすことが症状改善につながる場合もあります。
今回の記事ではPMSについて、具体的な症状や原因、対処法についてお伝えしました。
PMSの正式名称はPremenstrual Syndromeで、日本語では「月経前症候群」と訳されます。月経前3~10日間程度に様々な身体的・精神的症状が見られ、その症状や程度には個人差があります。
PMSのはっきりとした原因は分かっていないものの、大きく影響しているのがホルモンです。病院を受診し、カウンセリングや服薬による対処を行うことや、セルフケアで症状が改善する場合があります。
※引用・参考文献
①日本産科婦人科学会編:産科婦人科用語集・用語解説集改訂第 4 版,東京:日本産科婦人科学会,2018
②公益社団法人日本産科婦人科学会 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
③日本精神神経学会(日本語版用語監修),髙橋三郎・大野 裕(監訳):DSM-5Ⓡ精神疾患の診断・統計マニュアル,東京:医学書院,2014;171-172(診断基準)
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