2025.08.29
妊娠

赤ちゃんの健やかな成長・発達のために必要な妊娠中の健康管理。その中には感染症予防もあり、麻疹(はしか)も含まれます。よく聞く病名ですが、麻疹がどんな病気で、妊娠中に罹るとどのような影響があるのか気になる妊婦さんも多いでしょう。
この記事では、麻疹の症状や妊娠中に罹るリスク、予防について解説します。麻疹について詳しく知りたい妊婦さん、これから妊娠を計画している人は参考にしてみてください。

麻疹とは麻疹ウイルスによって起こる感染症です。麻疹ウイルスに感染すると、10~12日ほどの潜伏期間を経て、発熱・全身の発疹・咳や鼻水、目の充血といった症状が現れます。また麻疹は、肺炎や中耳炎を合併しやすく、まれですが脳症を発症など重症化したり、亡くなったりするケースもあります。
麻疹にかかりやすいのが子どもです。かつては麻疹により子どもが亡くなってしまうケースもあり、子どもの感染症のなかでも恐れられていました。現在は、ワクチンの実用化により患者数が大幅に減ったものの、近年再び流行の兆しがみられています。これは世界のグローバル化により、海外渡航者の行き来が増えているためです。
麻疹とよく似た名前の病気に風疹があります。風疹は風疹ウイルスによって起こる感染症です。風疹の主な症状には、発熱・発疹・リンパ節の腫れがあります。風疹は「三日はしか」と呼ばれるように、一般的に麻疹よりも症状が軽い特徴があります。
一方で、妊婦さんが妊娠初期に風疹にかかると、おなかの赤ちゃんに心臓病・白内障・難聴などの先天的な障害を引き起こすため、麻疹と同様、妊娠中の感染に注意が必要です。

麻疹ウイルスの感染経路には、空気感染・飛沫感染・接触感染の3つがあります。
| 空気感染: 感染者が発した咳・くしゃみの水分が蒸発し、空気中に漂う粒子を吸い込むことで感染 飛沫感染:感染者が発した咳や・くしゃみから感染 接触感染:手や器具に付着したウイルスから感染 |
麻疹にかかった患者さんの場合、発症の1日前から解熱後3日間まで、周囲の人に麻疹をうつす感染力をもちます。とくに周囲への感染力が強くなるのは、発疹が出る前までの期間です。

子どもの病気のイメージのある麻疹ですが、近年、子どもや大人の患者数が増えています。妊娠中に麻疹にかかると、妊娠していないときに比べて重症化しやすいことがわかっています。
麻疹ワクチンは1978年に定期接種になったものの、ワクチン接種を受けておらず、子どもの頃に麻疹に感染しないまま大人になると、麻疹への免疫がないことになり、注意が必要です。妊娠中に麻疹にかかったときは、「ただの麻疹」と思わずに、医療機関を受診しましょう。
妊婦さんが麻疹にかかると、おなかの赤ちゃんにも悪影響を与えます。麻疹は風疹のように、赤ちゃんの奇形を引き起こす頻度は低いものの、流産・早産をしやすくなることがわかっています。
例えば、麻疹にかかった妊婦さんの3割が流産や早産が起きたという報告もあります。このうち9割のケースは、妊婦さんの発疹が現れてから、2週間以内に流産や早産がみられたとのことです。
また、ワクチン未接種などで麻疹に対する免疫がない母親から生まれた赤ちゃんは、1~2歳のあいだに麻疹にかかると重症化しやすくなります。
このように妊娠中の麻疹にかかると、母子の健康が損なわれる結果になります。妊娠中の健康管理の一環として、麻疹にかからないようにすることも大切です。

妊娠中の健康管理の一環として、麻疹への感染予防を行いましょう。妊婦さんが麻疹を予防するには、次のポイントがあります。
過去に麻疹ワクチンを受けたことがある人も、妊娠中は感染予防に注意しましょう。子どもの頃にワクチン接種を受けていても、年月とともに抗体価が低下していることもあります。実際、妊娠中に麻疹にかかり重症化がみられた人のうち、1割の人は子どもの頃にワクチン接種を受けていました。
麻疹の感染力は、ウイルスの中でも強いといわれています。ワクチン接種を受けた人でも、ニュースなどで麻疹の流行状況を確認し、流行期には人混みを避けるようにしましょう。外出が必要の際はマスクを着用し、こまめに手洗い・うがいを行うことも有効です。
麻疹の感染を予防するのに有効なのが、ワクチン接種です。麻疹ワクチンを接種したり、一度でも感染したりすれば、生涯にかけて免疫が獲得されると考えられています。
麻疹ワクチンの接種効果は、時間経過とともに低くなることもあるものの、接種経験があれば、麻疹の感染時に重症化を防げます。
麻疹に対する免疫があるかどうかは、採血による抗体検査でわかります。妊娠中はワクチン接種を受けられません。妊娠を計画している人は、まずは麻疹ウイルスの抗体があるかどうかを調べましょう。
抗体がなく、麻疹に対する免疫がないようであれば、医療機関で麻疹ワクチンの接種を受けるのがおすすめです。すでに妊娠中の人は出産後にワクチン接種を受ける必要があります。
ここでは、妊娠中の麻疹に関してよくみられる質問に回答します。
麻疹の感染力はきわめて強いといわれています。例えば、ワクチン未接種などで麻疹に対する免疫を持たない人は、麻疹患者と同じ部屋にいるだけで、90%以上感染すると考えられています。
妊娠中に本人ではなく、パートナーである夫が麻疹に感染することもあるでしょう。麻疹は感染力が強いため、できる限り別室で過ごすことが大切です。妻が妊娠中である場合、夫は医療機関に受診し、生活指導を受けるようにしましょう。
麻疹(はしか)は麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。主な症状には、発熱や全身の発疹ですが、妊婦さんが麻疹にかかると重症化して、脳症を発症するケースもみられています。また妊娠中に麻疹に感染すると、流産や早産のリスクが高まりやすくなります。
1978年以降、麻疹ワクチンは定期接種になりましたが、ワクチン接種をしていても、効果が弱まっていることもあります。妊娠を計画している人は麻疹への免疫力を確認するために、抗体検査を受けるようにしましょう。
過去に麻疹ワクチンを受けていなかった人や、麻疹ウイルスの抗体が少ない人は、妊娠前にワクチン接種を受けるのがおすすめです。すでに妊娠している人は、出産後に麻疹ワクチンの接種を受けるとよいでしょう。
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