更新日:2025.12.30
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子どもの顔や体型、性格や能力は親から遺伝するのか気になったことはないでしょうか?
親から遺伝するものには、外見や身体的特徴だけでなく、病気のリスクや能力なども含まれます。ただし、全てが遺伝で決まるわけではなく、環境要因も大きく影響します。
そこで、この記事では親から遺伝する具体的な特徴や、母親・父親それぞれから遺伝するもの、遺伝性疾患のリスクについて解説します。遺伝の仕組みを理解し、子育ての参考としてみてください。

親から遺伝するものを理解するには、まず遺伝の基本的な仕組みを知ることが大切です。
遺伝とは、親の持つ遺伝情報が子どもに受け継がれる現象を指します。この遺伝情報は「遺伝子」という形で、DNAに記録されています。
私たちの身体的特徴や一部の能力は、この遺伝子によって決まる部分があります。ただし、すべてが遺伝だけで決まるわけではありません。
遺伝の仕組みは、親から受け継いだDNAによって決まります。
人間は46本の染色体を持っており、このうち23本は母親から、残りの23本は父親から受け継ぎます。染色体の中には多数の遺伝子が存在し、それぞれが身体の特徴を決める設計図の役割を果たしています。
子どもは両親から半分ずつ遺伝情報を受け取るため、両親の特徴を併せ持つことになります。ただし、どの遺伝子が優先的に現れるかは、遺伝子の組み合わせによって異なります。
遺伝には「優性遺伝」と「劣性遺伝」という2つのパターンがあります。
優性遺伝とは、片方の親からその遺伝子を受け継ぐだけで、その特徴が子どもに現れる遺伝の形です。例えば、二重まぶたの遺伝子は優性なので、片方の親から受け継げば子どもは二重まぶたになります。
一方、劣性遺伝とは、両方の親から同じ遺伝子を受け継がないと、その特徴が現れない遺伝の形です。
なお、優性・劣性という言葉は優れている・劣っているという意味ではなく、遺伝子の現れやすさを示す用語です。

親から遺伝する外見や身体的特徴には、以下のようなものがあります。
これらは遺伝子によって決まる部分が大きい特徴です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
顔のパーツは親から遺伝する代表的な特徴です。
二重まぶたは優性遺伝のため、片方の親が二重であれば子どもも二重になりやすくなります。目の色も遺伝によって決まり、濃い色が優性として現れます。
鼻の高さや形も遺伝の影響を受けます。高い鼻は優性遺伝のため、子どもに受け継がれやすい特徴です。
耳の形や大きさ、耳たぶの有無も遺伝で決まります。
身長は遺伝の影響が特に大きい身体的特徴です。
理化学研究所と日本医療研究開発機構の研究によると、身長の個人差の約8割は遺伝的要因によって決まることが報告されています。残りの約2割は栄養状態や睡眠、運動などの生活環境が影響します。
体型についても、太りやすさや痩せやすさといった体質は遺伝の影響を受けます。ただし、食生活や運動習慣など環境要因の影響も大きい特徴です。
参考:国立研究開発法人日本医療研究開発機構|日本人の身長に関わる遺伝的特徴を解明―19万人の解析から日本人の身長に関わる遺伝的要因の謎に迫る―
髪質や髪色は親から遺伝する外見的特徴のひとつです。
くせ毛は優性遺伝のため、片方の親がくせ毛であれば子どももくせ毛になる可能性が高くなります。直毛は劣性遺伝です。
髪色も遺伝によって決まります。黒髪や茶色など濃い色の髪は優性遺伝として現れやすく、明るい色の髪は劣性遺伝です。
歯並びは親から遺伝する身体的特徴のひとつです。
顎の大きさや形は遺伝によって決まります。親の顎が小さい場合、子どもも小さい顎を受け継ぐ可能性があり、歯が並ぶスペースが不足しやすくなります。
歯の大きさや本数も遺伝の影響を受けます。ただし、歯並びは幼少期の指しゃぶりや口呼吸などの習慣も影響するため、適切な生活習慣で改善が可能です。

親から遺伝する性格や能力には、次のようなものがあります。
これらは遺伝と環境の両方が影響する特徴です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
性格は親から遺伝する要素のひとつですが、環境の影響も大きい特徴です。
日本心理学会によると、双生児研究から性格には遺伝の影響が認められることが示されています。外向性や神経質傾向などの気質は遺伝の影響を受けることが明らかになっています。
ただし、性格の形成には家庭環境や学校での経験など、環境要因も大きく関わっています。
参考:公益社団法人 日本心理学会|性格は遺伝で決まるって本当ですか?
知能は遺伝と環境の両方が影響する能力です。
双生児研究などの行動遺伝学研究により、知能には遺伝の影響があることが示されていますが、同時に環境要因も重要な役割を果たすことが明らかになっています。
幼少期は家庭や学校教育などの環境要因の影響が大きく、成長とともに遺伝的要因の影響が大きくなる傾向があります。
運動能力は親から遺伝する要素を含む能力です。
筋肉の質や体格などの身体的特徴が遺伝によって決まるため、運動能力にも遺伝が影響します。
ただし、トレーニングや練習などの環境要因も運動能力の向上に大きく関わるため、遺伝だけで決まるものではありません。
芸術的才能も遺伝の影響を受ける可能性がある能力です。
音楽のリズム感や絶対音感などは、遺伝的な要素が関係している可能性が指摘されています。
ただし、才能を伸ばすには遺伝的素質に加えて、幼少期からの教育や練習環境も重要な要素となります。

母親から特有に遺伝するものには、下記のようなものがあります。
母親からのみ遺伝する特徴や、母親を介して遺伝する病気について詳しく見ていきましょう。
ミトコンドリアDNAは、母親からのみ遺伝する特殊なDNAです。
難病情報センターによると、受精の際に父親由来の精子のミトコンドリアは受精卵中で消滅するため、受精卵のミトコンドリアDNAはすべて母親由来になることがわかっています。これを「母系遺伝」と言います。
ミトコンドリアDNAに変異がある場合、ミトコンドリア病などの疾患が子どもに遺伝する可能性があります。
X連鎖性劣性遺伝病は、母親を介して子どもに遺伝する病気です。
血友病や赤緑色覚異常などが代表的な例で、X染色体上の遺伝子異常によって起こります。女性はX染色体を2本持つため保因者となり、男性はX染色体を1本しか持たないため発症しやすい特徴があります。
血友病の場合、保因者の母親から生まれた男児は2分の1の確率で血友病を発症する恐れがあります。
卵子の質は、母親の年齢によって影響を受けます。
日本生殖医学会によると、卵子は女性が胎児の時にすでに作られており、年齢とともに数が減少し質も低下することが報告されています。特に35歳を過ぎると卵子の質の低下が加速し、染色体異常による流産や胎児異常のリスクが高まります。
ただし、卵子の質の低下と生まれてくる子どもの能力や資質とは関係ありません。
参考:一般社団法人 日本生殖医学会|Q24.加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?

父親から特有に遺伝するものには、下記のようなものがあります。
父親からのみ遺伝する特徴や、父親を介して影響を与える要素について詳しく見ていきましょう。
子どもの性別は、父親から受け継ぐ性染色体によって決まります。
男性はX染色体とY染色体を1つずつ持ち、女性はX染色体を2つ持っています。父親がY染色体を子どもに渡すと男の子になり、X染色体を渡すと女の子になります。
Y染色体上にはSRY遺伝子という男性への発育に関与する遺伝子が存在し、胎児期に男性の特徴を発達させる役割を果たします。
男性型脱毛症(AGA)は、遺伝の影響が大きい特徴です。
日本皮膚科学会によると、AGAは遺伝や男性ホルモンの影響が主な原因とされており、日本人男性の約3人に1人が発症すると報告されています。
薄毛になりやすい体質は遺伝によって受け継がれます。母方からも父方からも薄毛に関連する遺伝子を受け継ぐ可能性があり、両方の家系の影響を受けます。
参考:日本皮膚科学会|男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版
父親の年齢が高くなると、精子のDNA変異が増加することが報告されています。
日本生殖医学会によると、加齢によって精子のDNA断片化率が上昇することが知られており、50歳以上の男性では30歳未満と比べて4.58倍高いと報告されています。
東北大学の研究でも、父親の高齢化が精子形成過程に影響を与え、次世代の神経発達に関わる恐れが示されています。ただし、これらは研究段階の知見です。
参考:一般社団法人 日本生殖医学会|Q25.男性の加齢は不妊症・流産にどんな影響を与えるのですか?

親から遺伝する要素には、病気や疾患のリスクも含まれます。
遺伝性の病気にはさまざまな種類があり、それぞれ遺伝の仕組みや発症の確率が異なります。主な遺伝性疾患は以下の通りです。
それぞれ説明していきます。
先天性疾患は、生まれつき持っている病気のことです。
先天性疾患の多くは遺伝子の変化によって引き起こされます。血友病や色覚異常などが代表的な例です。
遺伝性疾患の総数は7,000を超えることが知られています。劣性遺伝の場合は両親とも保因者である必要があるため、家族歴がなくても子どもに現れることがあります。
生活習慣病は、遺伝と環境の両方が関係する病気です。
2型糖尿病の発症要因には、遺伝的要因に加えて生活習慣が環境因子として重要であることが知られています。高血圧についても、遺伝的要因が発症に影響することが報告されています。
ただし、遺伝的な体質を持っていても必ず発症するわけではありません。食生活や運動習慣などの生活習慣の改善により、発症を予防できる可能性があります。
参考:厚生労働省|糖尿病
がんの一部には、遺伝的な要因が関係するものがあります。
遺伝性腫瘍とは、生まれながらにがんを発症しやすい体質を持っていることを意味します。遺伝性腫瘍の場合、がんの発生を抑制する遺伝子が生まれつき機能していない状態にあります。
家族にがんの病歴が多い場合は、遺伝カウンセリングを受けることで、適切な検診や予防的措置について相談できます。
発達障害には、遺伝的な要因が関与していると考えられています。
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害は、複数の遺伝的要因が組み合わさって発現すると考えられています。ただし、親の育て方が原因で発症するものではありません。
遺伝的要因に加えて、妊娠中の環境や出生時の状況なども影響すると考えられています。早期発見と適切な支援により、日常生活の困難を軽減できます。
参考:独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所|自閉症の遺伝子治療は可能か?

親から遺伝する要素は多くありますが、遺伝だけで全てが決まるわけではありません。
多くの特徴や能力は、遺伝的要因と環境的要因が相互に影響して個人の違いを生じます。このような特徴は「多因子形質」と呼ばれています。
それぞれ説明していきます。
学力・知能は、遺伝と環境の両方が関係します。
学力や知能には遺伝的な要因が関与していることが知られていますが、学習環境や教育の機会によっても大きく影響を受けます。適切な教育環境や学習機会がなければ、遺伝的な素質を十分に発揮することは難しくなります。
家庭環境や学習習慣なども、学力の向上に重要な役割を果たします。
運動能力も、遺伝と環境の両方が影響します。
遺伝的な要因が関与していますが、トレーニングや運動習慣によって大きく向上させることができます。幼少期からの運動経験や適切な指導も、運動能力の発達に重要です。
遺伝的な素質に加えて、継続的な練習や適切な環境が不可欠です。
性格・気質は、環境要因の影響が大きい要素です。
遺伝的な要因もありますが、家庭環境や育て方、社会的な経験などの環境要因が大きく影響します。同じ家庭で育った兄弟姉妹でも性格が異なることからも、環境の影響の大きさがわかります。
生まれ持った気質はあっても、成長過程での経験によって性格は変化していきます。
身長は、遺伝的な影響が強い特徴です。
身長は多因子形質の中でも遺伝的な影響が強いことが知られています。双子を用いた研究では、身長の個人差の8割程度は遺伝的要因によって生じていると報告されています。
ただし、栄養状態や生活環境も身長に影響を与えます。適切な栄養摂取や十分な睡眠が、遺伝的な素質を最大限に発揮するために重要です。
体質・生活習慣病のリスクは、遺伝と生活習慣の両方が関係します。
糖尿病や高血圧などの生活習慣病には、遺伝的にかかりやすい体質が関係しています。しかし、遺伝的なリスクがあっても、食生活や運動習慣などの生活習慣を改善することで、発症を予防できる可能性があります。
家族に生活習慣病の人がいる場合は、早い段階から健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
参考:厚生労働省|糖尿病
親から遺伝するものには、外見や身体的特徴、病気のリスク、能力などがあります。
遺伝の仕組みを理解することで、子どもの特徴や体質を正しく把握しやすくなります。ただし、多くの特徴は遺伝だけで決まるのではなく、環境要因も大きく影響することを忘れてはいけません。
遺伝的な素質を活かしながら、適切な環境を整えることが大切です。栄養バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動など、日々の生活習慣が子どもの成長に重要な役割を果たします。
遺伝と環境の両方を理解して、子どもの健やかな成長をサポートしましょう。
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