2025.09.30
出産

出産後に胎盤を食べるという話を聞いて、その効果や安全性について疑問を感じたことはないでしょうか?
胎盤食は、産後の体力回復や母乳への好影響が期待されることがありますが、ヒトでの有効性は確認されていません。海外では一部のセレブが実践していることで注目を集めており、日本でも関心を持つ人が増えています。
そこで、この記事では、胎盤食について知りたい方へ向けて効果やリスク、実際の体験談について詳しく解説します。

胎盤とは、妊娠中にお母さんのお腹の中で作られる器官です。
胎盤はお母さんと赤ちゃんをつなぐ役割をしています。お母さんから赤ちゃんに栄養や酸素を送り、赤ちゃんからの不要なものをお母さんに戻します。
成熟胎盤の平均的な大きさは直径約22cm・厚さ約2.5cm、重量は約500g前後とする報告があります。ただし個人差があります。
胎盤は、出産時に赤ちゃんの後から出てくるため、「後産」とも呼ばれています。
参考:PubMed Central (PMC) (アメリカ国立衛生研究所)|胎盤:多面的な一時的な臓器

胎盤を食べる文化は世界各地に存在し、それぞれ異なる背景があります。
近年では、産後の体力回復や健康効果を期待して胎盤食を行う人が増えています。
しかし、胎盤食に対する考え方は国や地域によって大きく異なり、文化的な背景を理解することが重要です。
アメリカでは産後の体力回復を目的とした胎盤食が人気です。
有名人やセレブが胎盤をカプセルにして摂取する方法を公表し、一般にも広まりました。専門業者が胎盤を乾燥させてカプセル化するサービスも提供されています。
中国では古くから胎盤を「紫河車」と呼び、漢方薬として利用してきました。体力増強や美容効果があるとされ、現在でも一部で使用されています。
韓国では産後の回復を助ける食材として胎盤が用いられることがあります。スープにして食べる方法が一般的です。
日本では胎盤食に対して慎重な考え方が主流です。
医療機関では胎盤の持ち帰りを禁止している場合が多く、衛生面や安全性を重視しています。厚生労働省や日本産科婦人科学会の妊婦向け指針でも胎盤食に関する記載はありません。
海外の影響を受けて関心を持つ人も増えていますが、法的な規制や医療機関の方針により実際に行うことは困難です。日本では栄養バランスの良い食事や適切な医療ケアによる産後回復が重視されています。
参考:公益社団法人日本産科婦人科学会|産婦人科診療ガイドライン-産科編2023

胎盤を食べることで期待されるメリットには大きく4つあります。
ただし、これらの効果については科学的な根拠が不十分であり、医学的に証明されたものではありません。
それぞれ説明していきます。
胎盤食の最も一般的な目的は産後の体力回復です。
胎盤にはタンパク質やビタミン、ミネラルが含まれており、出産で消耗した体力を回復させる効果があるとされています。特に鉄分が豊富に含まれているため、出産時の出血による貧血の改善に役立つと考えられています。
しかし、これらの栄養素は通常の食事からも十分に摂取可能であり、胎盤食でなければ得られない特別な栄養素があるわけではありません。
胎盤食により母乳の質が向上するとされています。
胎盤に含まれるホルモンや栄養素が母乳の分泌量を増やし、栄養価を高める効果があると考えられています。一部の体験者からは母乳の出が良くなったという報告もあります。
ただし、母乳の質や量は個人差が大きく、胎盤食以外の要因も多く関わっているため、直接的な効果は明確ではありません。
胎盤食がホルモンバランスの調整に役立つとされています。
出産後は急激なホルモン変化により、体調不良や気分の落ち込みが起こりやすくなります。胎盤に含まれるホルモンがこれらの変化を緩和し、精神面の安定をもたらすと考えられています。
しかし、胎盤に含まれるホルモンが実際に体内でどのような働きをするかは十分に解明されていません。
胎盤食が産後うつの予防に効果があるという期待があります。
胎盤に含まれる成分が精神状態を安定させ、産後うつのリスクを軽減するとされています。一部の海外研究では胎盤食を行った女性の気分改善が報告されています。
ただし、産後うつは複雑な要因が関わる疾患であり、胎盤食だけで予防できるものではありません。専門的な医療ケアが最も重要です。

胎盤を食べることには複数のデメリットやリスクがあります。
これらのリスクは健康に深刻な影響を与える恐れがあるため、十分に理解しておく必要があります。
それぞれ説明していきます。
胎盤食には感染症のリスクが伴います。
胎盤には細菌やウイルスが付着している恐れがあり、適切な処理を行わずに摂取すると食中毒や感染症を引き起こす危険があります。特に生の状態で摂取する場合、リスクは大幅に高まります。
実際にアメリカでは胎盤カプセルを摂取した母親から新生児にB群溶血性連鎖球菌感染症が伝播した事例が報告されています。胎盤の加熱処理が不十分だったことが原因とされています。
胎盤には妊娠中に体内に蓄積された有害物質が含まれている恐れがあります。
重金属や環境汚染物質、薬物などが胎盤に残留している場合、これらを摂取することで健康被害を受けるリスクがあります。胎盤は胎児を有害物質から守るフィルターの役割も果たしているため、こうした物質が濃縮されている可能性も考えられます。
特に妊娠中に喫煙や飲酒をしていた場合、これらの影響が胎盤に残っている危険性があります。
胎盤の保存や処理における衛生管理が困難です。
出産から摂取までの間に適切な温度管理や衛生処理が行われない場合、細菌の繁殖や腐敗が進む可能性があります。家庭での処理では専門的な知識や設備が不足しており、安全性を確保することは困難です。
また、胎盤食用の処理を行う業者についても、統一された安全基準や規制が存在しないため、品質や安全性にばらつきがあります。
日本では胎盤の取り扱いに関する法的な制限があります。
多くの医療機関では胎盤の持ち帰りを禁止しており、医療廃棄物として適切に処理することが義務付けられています。胎盤を無断で持ち帰ることは医療機関の方針に反する行為となります。
また、胎盤を食品として販売することは食品衛生法の観点から問題があり、商業的な胎盤食サービスの提供は困難な状況です。

胎盤を食べた人の体験談には味や食感、食べ方に関するさまざまな報告があります。
胎盤食を検討する際には、実際に体験した人の声を参考にすることも重要です。
それぞれ説明していきます。
胎盤の味について体験者からはさまざまな感想が報告されています。
生の胎盤は鉄分が多いため、金属的で血液のような味がするという人が多くいます。食感は柔らかく、レバーに似ているという表現もよく使われます。
一般的な食べ方には下記のような方法があります。
特にニンニクや生姜と一緒に調理すると独特の臭みが軽減されるという報告があります。
多くの海外セレブが胎盤食の体験を公表しています。
女優のジャニュアリー・ジョーンズは胎盤をカプセル化して摂取し、エネルギーレベルの向上を実感したと報告しています。この方法は専門業者が胎盤を乾燥させて粉末にし、カプセルに詰めて提供するものです。
リアリティスターのコートニー・カーダシアンも胎盤カプセルを利用し、産後の回復が早かったとコメントしています。カプセルであれば味を感じることなく摂取できるため、最も人気の高い食べ方となっています。
日本では胎盤食の体験談は限られていますが、一部の体験者からの報告があります。
海外で出産した日本人女性の中には、現地の習慣に従って胎盤食を体験した人がいます。
味については「レバーのような食感で思ったより食べやすかった」という感想がある一方で、「独特の臭いと味で続けるのは困難」という声もあります。カプセル化を希望する人も多く、味を避けて栄養摂取だけを目的とする傾向が見られます。
胎盤を食べることについては、メリットとデメリットの両方を十分に理解した上で慎重に判断する必要があります。
期待される効果として産後の体力回復や母乳の質向上などが挙げられていますが、科学的な根拠は不十分です。一方で、感染症のリスクや有害物質の摂取可能性、法的な問題などさまざまなリスクが存在します。
日本では医療機関での胎盤持ち帰りが困難であり、安全性を確保した胎盤食の実施は現実的ではありません。産後の回復には栄養バランスの良い食事と適切な医療ケアを優先することが重要です。
胎盤食を検討する場合は、必ず医師に相談し、リスクを十分に理解した上で判断してください。
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