更新日:2025.12.30
妊娠

妊娠中の食事で「これは食べても大丈夫?」と不安になることはありませんか?お寿司やチーズ、レバーなど、妊娠前は問題なく食べていたものでも、妊娠中は注意が必要な食材があります。感染症のリスクや胎児への影響を正しく理解することで、安心して食事を楽しめます。
そこでこの記事では、妊娠中に絶対避けるべき食べ物と摂取量に注意が必要な食べ物、そして積極的に摂りたい栄養素について、厚生労働省のガイドラインをもとに解説します。母体と胎児の健康を守るための食生活の参考にしてください。

妊娠中に絶対避けるべき食べ物には、大きく5つのカテゴリーがあります。
これらは感染症のリスクや胎児への直接的な影響があるため、妊娠中は完全に避ける必要があります。それぞれ説明していきます。
生肉や加熱が不十分な肉は避けてください。
【避けるべき食材】
生肉にはトキソプラズマという寄生虫が潜んでいる恐れがあります。妊娠中に初感染すると、胎児に重篤な影響を及ぼす恐れがあります。肉料理は中心部まで十分に加熱されたものを選びましょう。
参考:厚生労働省 検疫所|トキソプラズマ症(Toxoplasmosis)
生魚・刺身・生卵には注意が必要です。
【避けるべき食材】
リステリア菌やサルモネラ菌などの食中毒菌が含まれている可能性があります。妊娠中は免疫力が低下しているため、感染しやすく重症化しやすい状態です。魚は加熱したもの、卵は完全に火を通したものを選びましょう。
生ハム・スモークサーモンも妊娠中は避けてください。
【避けるべき食材】
これらの非加熱の加工品には、リステリア菌が繁殖している可能性があります。リステリア菌は冷蔵庫の温度でも増殖できるため、冷蔵保存していても安心できません。加熱して食べる場合は問題ありません。
加熱殺菌していないナチュラルチーズは避けてください。
【避けるべき食材】
【食べられる食材】
非加熱のナチュラルチーズには、リステリア菌が含まれている可能性があります。特に輸入品のチーズは、製造過程で加熱殺菌していないものが多く存在します。購入時はパッケージの表示を確認してください。
参考:内閣府 食品安全委員会|お母さんになるあなたと周りの人たちへ
アルコール飲料は妊娠中に絶対避けてください。
【避けるべき飲料】
アルコールは胎盤を通過して胎児に直接届き、脳や身体の発達に深刻な影響を与える恐れがあります。少量でも安全とされる量は存在しません。料理酒やみりんも、加熱されていない状態では避ける必要があります。
参考:内閣府 食品安全委員会|妊婦のアルコール飲料の摂取による胎児への影響

妊娠中、摂取量に注意が必要な食べ物があります。
これらは完全に避ける必要はありませんが、過剰摂取すると胎児に影響を及ぼす恐れがあります。推奨摂取量を守りましょう。
水銀を含む魚は摂取量に注意してください。
【注意が必要な魚】
推奨摂取量は、1回約80g(刺身1人前または切り身1切れ程度)として週に1回まで。
大型魚には水銀が蓄積されており、胎児の神経発達に影響を与える恐れがあります。厚生労働省の調査では、摂食量を1回80gとして検討されており、この量を基準に摂取頻度が定められています。ツナ缶やサケ、サバなどの小型魚は一般的に水銀含有量が少なく、厚生労働省のガイドラインでは特段の制限対象とされていません。
参考:厚生労働省|妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項
ビタミンAを多く含む食品は過剰摂取に注意してください。
【注意が必要な食材】
日本人の食事摂取基準2020年版によると、成人女性の推奨量は650〜700μgRAE/日、妊婦の付加量は80μgRAEです。レバーは100gあたり、鶏レバーで約14,000μgRAE、豚レバーで約13,000μgRAE含むため、少量でも過剰摂取になりやすく、週に1回程度、少量(串焼き1〜2本程度)までにとどめましょう。
参考:厚生労働省|妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
参考:厚生労働省|日本人の食事摂取基準2020年版
ヨウ素を多く含む食品は摂取量に注意してください。厚生労働省の食生活指針では、ヨウ素の過剰摂取についても言及されています。
【注意が必要な食材】
推奨摂取量は、昆布だしは通常の使用量なら問題ありませんが、昆布そのものを大量に食べるのは避けましょう。
ヨウ素の過剰摂取は、胎児の甲状腺機能に影響を与える恐れがあります。わかめやのりは昆布ほどヨウ素含有量が多くないため、通常量なら問題ありません。
参考:厚生労働省|妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
カフェインを含む飲み物は摂取量に注意してください。
【注意が必要な飲み物】
推奨摂取量は、1日200mg以下(コーヒーならカップ2杯程度)です。
カフェインの過剰摂取は、流産や低出生体重児のリスクを高める恐れがあります。カフェインレスコーヒーや麦茶、ルイボスティーはカフェインを含まないため安心して飲めます。
参考:厚生労働省|食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~

妊娠中に避けるべき食べ物には、感染症リスクや健康被害の原因となる菌や物質が潜んでいます。主なリスクは下記の5つです。
それぞれのリスクとメカニズムについて詳しく説明していきます。
リステリア菌は冷蔵庫の温度(4℃程度)でも増殖できる食中毒菌です。妊婦は一般の人と比べて約20倍感染しやすいとされています。
非加熱の加工品や加熱殺菌していない乳製品を通じて感染し、発熱や筋肉痛などの症状が現れます。胎盤や胎児に感染すると、流産、早産、死産の原因となることがあります。
トキソプラズマは寄生虫の一種で、加熱が不十分な肉や猫の糞便に汚染された土や水を通じて感染します。
妊婦自身には軽い症状か無症状ですが、妊娠中の初感染により胎児に先天性トキソプラズマ症を引き起こす恐れがあります。水頭症、脳内石灰化、視力障害などの重篤な症状が現れることがあり、感染時期が早いほど影響が大きくなります。
参考:厚生労働省 検疫所|トキソプラズマ症(Toxoplasmosis)
サルモネラ菌は、主に卵や鶏肉を汚染する食中毒菌です。加熱が不十分な卵料理や生卵を食べることで感染します。
妊娠中は免疫機能が低下しているため感染しやすく、激しい下痢、腹痛、発熱、嘔吐などの症状が現れます。重症化すると脱水症状を起こし、胎児の発育に影響を及ぼす恐れがあります。
参考:厚生労働省|卵によるサルモネラ食中毒の発生防止について
水銀は食物連鎖を通じて大型魚の体内に蓄積される有害物質です。胎盤を通過して胎児に届き、神経系の発達に影響を与える恐れがあります。
過剰摂取すると、知能発達の遅れ、運動機能障害、感覚機能障害のリスクが高まります。厚生労働省は、1回約80g(刺身1人前または切り身1切れ程度)として週に1回までと定めています。
参考:厚生労働省|妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項
動物性食品に含まれるレチノール(ビタミンA)は、過剰摂取すると胎児の細胞分化や器官形成に影響を与え、催奇形性を示すことが報告されています。
特に妊娠初期(妊娠3か月以内)は胎児の器官形成が行われる重要な時期で、心臓、神経系、顔面、泌尿器などに先天異常が生じる恐れがあります。
成人女性の推奨量は650〜700μgRAE/日に対して、妊婦の付加量は80μgRAEです。鶏レバー100gには約14,000μgRAE含まれており、推奨量の約20倍以上になります。
緑黄色野菜に含まれるβカロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換されるため、過剰摂取の心配はありません。
参考:厚生労働省|妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針

妊娠中は避けるべき食べ物だけでなく、積極的に摂りたい栄養素もあります。特に重要なのは下記の3つです。
それぞれの栄養素の役割と具体的な食材について説明していきます。
葉酸は胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らすために重要な栄養素です。厚生労働省は、妊娠を計画している女性や妊娠初期の女性に対して、通常の食事に加えて1日400μgの葉酸をサプリメントなどで摂取することを推奨しています。
ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガス、枝豆などの緑黄色野菜、納豆、イチゴ、アボカドなどに多く含まれます。葉酸は水溶性ビタミンのため、調理による損失が大きい点に注意が必要です。
参考:厚生労働省|妊娠前からはじめよう 健やかなからだづくりと食生活Book
鉄分は妊娠中に不足しやすい栄養素です。妊娠すると血液量が増加するため、通常よりも多くの鉄分が必要になります。日本人の食事摂取基準2020年版によると、妊娠初期は+2.5mg、妊娠中期・後期は+9.5mgの付加量が推奨されています。
赤身の肉、魚、あさり、ひじき、小松菜、ほうれん草、大豆製品などに多く含まれます。動物性食品のヘム鉄は吸収率が高く、植物性食品の非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が高まります。
カルシウムは胎児の骨や歯の形成に欠かせない栄養素です。妊娠中の付加量は設定されていませんが、成人女性の推奨量は1日650mgです。多くの女性が推奨量に達していないため、意識的な摂取が必要です。
牛乳、ヨーグルト、チーズ(加熱殺菌されたもの)、小魚、豆腐、納豆、小松菜、切り干し大根などに多く含まれます。
妊娠中の食事について、よくある質問にお答えします。
生魚の寿司は避けてください。リステリア菌やサルモネラ菌などの食中毒菌が含まれている恐れがあるためです。加熱された寿司ネタ(穴子、エビ、卵焼きなど)や、サーモンなどの水銀含有量が少ない魚を加熱したものであれば問題ありません。
加熱殺菌されたプロセスチーズやクリームチーズは食べられます。一方、加熱殺菌していないナチュラルチーズ(カマンベール、ブリー、ブルーチーズなど)は、リステリア菌のリスクがあるため避けてください。購入時はパッケージの表示を確認しましょう。
基本的に果物で避けるべきものはありません。果物にはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれており、妊娠中も安心して食べられます。ただし、糖分が多いため食べすぎには注意し、適量を心がけましょう。
妊娠中に食べてはいけないものは、生肉、生魚、生卵、加熱殺菌していないナチュラルチーズ、生ハム、アルコールなど、感染症のリスクがある食品です。また、水銀を含む大型魚やビタミンAを多く含むレバーなどは、摂取量に注意が必要です。
これらの食品を避ける理由は、リステリア菌、トキソプラズマ、サルモネラ菌などの感染症リスクや、胎児の神経発達や器官形成への影響があるためです。厚生労働省が定めるガイドラインに従い、適切な摂取量を守ることが大切です。
一方で、葉酸、鉄分、カルシウムなどの栄養素は妊娠中に積極的に摂りたい栄養素です。バランスの取れた食事を心がけ、避けるべき食品と摂るべき栄養素を正しく理解することで、母体と胎児の健康を守ることができます。不安なことがあれば、かかりつけの医師や助産師に相談しましょう。
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