ABOUT Prenatal Diagnosis
出生前診断とは、妊娠中に赤ちゃん(胎児)の状態を調べる検査のことをいいます。
産まれてくる赤ちゃんのうち、100人に3〜5人程度(約3〜5%)の割合で、なんらかの病気(疾患)や障害(先天性疾患)をもって産まれてくると言われています。
出生前診断を受けることで、赤ちゃん(胎児)の病気の有無や障害、状態を妊娠中から調べることができるため、医療や療育のサポートを整えることができるというメリットがあります。
出生前診断は非確定検査と確定検査の2種類に分けることができます。非確定検査の1つに一般超音波検査がありますが、こちらはいわゆる妊婦健診で全ての妊婦が受けることのできる項目であり、対象は全ての妊婦です。
一般超音波検査や医師の診察で、問題や異常の可能性がある場合、精密超音波検査などを受けることがあります。精密超音波検査は全ての妊婦が受ける検査ではなく、胎児の心臓や内蔵といった臓器に異常がある可能性を指摘された場合に受ける検査になります。
その他、非確定検査には母体血清マーカー検査(トリプルマーカー、クアトロテスト)や新型出生前診断(NIPT:無侵襲的出生前遺伝学的検査)などがあります。
非確定検査の1つである一般超音波検査などは、妊婦健診(妊婦健康診査)の項目に含まれています。保険適用ではありませんが、国からの助成制度で妊婦健康診査受診券(補助券)がありますので、全額を支払う必要はありません。支払額は全額費用負担から補助券で割り引いた費用で、割引額は自治体によって異なります。補助券での割引額を差し引くと、最終的に自己負担は3万円~7万円程度になることが多いようです。
非確定検査の1つであるNIPTは医療施設や実施機関によって差があるものの、20万円前後が目安です。保険適用もなく、国からの助成制度も無いため、一般的な検査と比較すると費用は高額になります。
出生前診断には、非確定検査と確定検査があります。
出生前診断における非確定検査は非侵襲的検査でもあり、妊婦、赤ちゃんへの負担は少なく、流産のリスクがない検査になります。
検査目的は赤ちゃんの疾患や障害の可能性をスクリーニングとして評価するためであり、超音波検査や母体血清マーカー検査 、NIPT(新型出生前診断)などがあります。
確定的検査は侵襲的検査でもあり、妊婦への負担が大きく、流産のリスクが存在します。羊水検査や絨毛検査などがあります。検査目的としては赤ちゃんの疾患や障害に対する診断を確定するために行います。
超音波(エコー)検査
診断が確定できない検査
(非確定的検査)
母体血清マーカー検査
コンバインド検査
新型出生前診断(NIPT)
診断が確定できる検査
(確定的検査)
絨毛検査
羊水検査
非確定的検査 | 確定的検査 | ||||
検査名 | 新型出生前診断 (NIPT) |
コンバインド検査 | 母体血清 マーカー検査 |
絨毛検査 | 羊水検査 |
---|---|---|---|---|---|
実施時間 | 9〜10週以降 | 11〜13週 | 15〜18週 | 11〜14週 | 15〜16週以降 |
検査の対象 | ダウン症候群 18トリソミー 13トリソミー |
ダウン症候群 18トリソミー |
ダウン症候群 18トリソミー 開放性神経管奇形 |
染色体疾患全般 | |
感度※1 | 99% | 83% | 80% | 100% | |
結果報告までの期間※2 | 1〜2周間 | 2週間程度 | 2〜3週間 | ||
リスク/留意点 |
リスクはありませんが、検査結果が「陽性」の場合、 診断を確定させるために確定的検査を受ける必要があります。 |
流産・死産のリスク 1/100(絨毛)〜1/300(羊水) |
※1 ダウン症候群に対して(モザイク除く) ※2 病院によって異なります。
形態異常とは、臓器や血液などの個体が正常な形態から著しく外れて見える状態の事を味する医学用語で、奇形、変形、変成、欠損などの病態が含まれます。
日本医学会が患者・家族の尊厳を傷つける恐れがあるとして「奇形」という医学用語の言い換えを検討し、「形態異常」が使われるようになりました。
お腹の中の赤ちゃんに超音波エコーを使って先天性異常がないかを調べる検査です。通常の妊婦検診で診ている胎児の成長や羊水の量などとは別に、心臓や脳、消化管などの主要臓器の異常の有無や、四肢の形態異常の有無などを調べます。
また、NT検査と言って、首の後ろのむくみの有無を調べてダウン症候群の疑いがあるかも調べます。
染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています。
人間の正常な細胞は、精子と卵子を除いて、いずれも23対、計46本の染色体をもっています。精子と卵子は、各ペアにつき1本の染色体しかもたないため、全体で23本の染色体をもっています。それぞれの染色体には数百から数千個の遺伝子が含まれています。
性染色体は、23対ある染色体のペアのうちの1つです。性染色体には2種類のものがあり、それぞれX染色体およびY染色体と呼ばれています。女性は典型的には2本のX染色体をもち(XX)、男性は典型的にはX染色体とY染色体を1本ずつもっています(XY)。
染色体の異常は、性染色体を含むすべての染色体で起こります。
非確定検査は陽性であった場合、確定検査を受けて診断を確定させる必要があります。非確定検査には以下の種類があります。
母体血清マーカー検査は妊娠15週~妊娠18週頃にお母さんの採血を行うことで、お腹の中の赤ちゃんの21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、神経管閉鎖障害(二分脊椎や無脳症など)の確率を算出する検査です。
この検査は、採血で調べることができる反面、お母さんの年齢や体重、妊娠週数、家族歴などが確率に影響されることや、あくまで確率なので正確なことは確定検査をするまでは分からないというデメリットがあります。
コンバインド検査は組み合わせ検査で、妊娠11~13週ごろに超音波検査と母体血清マーカー検査を行い、組み合わせて確率を算出する検査です。超音波検査のみ、母体血清マーカー検査のみよりも精度が高いとされていますが、こちらもあくまで確率ですので確実な診断は確定検査を受けなければ分かりません。
NIPTは妊娠9週※以降にお母さんから採血を行い、お母さんの血液中にある赤ちゃんのDNAの断片を分析する検査です。21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)の有無を調べることができます。
NIPTは、実際に赤ちゃんのDNAの断片を調べるため非常に精度が高い検査ですが、非確定検査ですので陽性判定が出た際には、診断をつけるために確定検査を受ける必要があります。
非確定検査で陽性であった場合には、確定検査を受けて診断を確定する必要があります。確定検査は、非確定検査に比べて検査自体に痛みがあったりお腹の中の赤ちゃんに危険があったりするなどリスクが伴います。
絨毛検査は妊娠10~13週ごろにお腹に直接針を刺して、胎盤の中にある絨毛細胞を採取して、お腹の中の赤ちゃんの染色体異常の有無を診断する検査です。合併症としては、流産や出血、破水、腹痛、胎児の受傷などがあり、流産の確率は約1%(1/100)とされています。
羊水検査は妊娠15~16週以降に、お腹に針を刺して羊水を採取して分析し染色体異常の有無を診断する検査です。合併症として、流産など絨毛検査と同様のものが挙げられますが、流産の確率は絨毛検査よりもやや低く約0.3%(1/300)程度とされています。絨毛検査に比べて、手技が比較的容易であることや検査可能時期が遅いことなどから、確定検査は羊水検査を選択する人が多いと言われています。